FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ガンマとは何か?:オプション入門

オプションの価格(プレミアム)を見るためには、グリークと呼ばれるギリシャ文字の要素がいくつも出てきます。その中で「デルタ」に次いで出てくるのが「ガンマ」です。これについて調べたことをまとめておきます。

デルタの変化率がガンマ

多くの用語辞典的なものには「デルタの変化率がガンマ」だと書いてあると思います。これ自体はそのとおりですが、これでは意味が分かりませんよね。デルタは、原資産の値動きがプレミアムの値動きに及ぼす影響でした。

 

デルタが大きくなれば、原資産の値動きがダイレクトにプレミアム価格に影響しますし、小さくなれば原資産の動きがあまり影響しなくなります。

kuzyo.hatenablog.com

デルタのおさらい

実は、デルタというのは一定ではなく、特に原資産が値動きしたときに変化するものなのです。オプションには、ITM/ATM/OTMという用語があります*1。このATMの時に、デルタは0.5となります。

 

そして、ITMに向かうほどデルタは上昇します。コールの買いで考えてみましょう。コールの買いはプレミアムの上昇で利益が出ます。つまり、原資産価格が上昇して、ITMに近づくほど利益が出るわけです。

 

資産価格が上昇すると利益が出るのは株のロングと同様ですが、ITMに向かうにつれてデルタが上昇するのがキモです。つまり、上昇すればするほどデルタが上昇し、デルタが上昇するということはプレミアム価格の上がり方が激しくなります。価格の上昇で、加速度的にプレミアムが上がっていくのです。

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コールの買いは「デルタロング」ですが、これは原資産がITMに向かう時に加速度的に利益(プレミアム)が増加することを意味しています。

デルタの変化率=ガンマとは、プレミアムの加速度

この「上昇すればするほどデルタが上昇し」の、デルタの変化率をガンマといいます。そう、コールの買いの場合の、現価格上昇→デルタ上昇→プレミアム加速度的に上昇の流れの中には、

  • 現価格上昇→(ガンマに従って)デルタ上昇→プレミアム加速度的に上昇

という仕組みが隠されているわけです。いわば、プレミアムがどのくらいのペースで加速していくかがガンマだといえます。プレミアムが走行距離、デルタがスピードだとすると、ガンマは加速度だといえるでしょう。原資産価格がITMに近づくと、どんどんスピードが上がっていきます。その時の加速度がガンマになるわけです。

ガンマ(γ)= デルタ値の変化幅 ÷ 原資産価格の変化額 

ガンマはATMで最大に

このガンマはATMで最大になります。そして、ITMやOTMになっていくほど小さくなる数字です。つまり、こんな感じでしょうか。

 

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  1. OTMのコールをロング中
  2. 現価格が上昇し、ATMに近づく →デルタによりプレミアム上昇
  3. ATMに近づくことでガンマが上昇 →デルタが上昇、プレミアム加速度的に増加
  4. ATMを超えてITMへ →デルタによりプレミアム上昇
  5. ITMに入っていくことでガンマは下落 →デルタは上昇するが加速度は弱まる

ガンマは残存期間で変動

ガンマに影響を及ぼすのはITM/ATM/OTMだけではありません。オプションの満期までの時間、つまり残存期間も影響します。

 

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 残存期間が長いうちは、ITM/ATM/OTMのガンマへの影響はそれほど大きくありません。しかし残存期間が減ってくると、ITM/ATM/OTMのどこにあるかが、どんどんと影響してくるようになります。ガンマの変動幅、敏感度が増してくる感じです。

 

残存期間が短いと、原資産価格が動くレンジも限られてくるので、ほんの僅かな変化が権利行使できるかどうかに影響してきます。これが、プレミアムが原資産価格の変動に敏感になるということを意味していると考えればいいでしょう。

ガンマロングとは?

先程、「コールの買い」はデルタロングで、原資産の値動きと利益が連動すると書きました。そしてガンマの存在によって、原資産が上昇するとデルタがさらにあがり、利益が加速度的に上昇します。つまり、ガンマによってアクセルが踏まれるわけです。

 

一方で、プットの売りはどうでしょうか? こちらもデルタロングなので、原資産が上がると利益が上昇します。ところが、プットの売りの場合はATMからOTMへ向かう意味でのデルタロングなので、逆にガンマが減少してしまいます。つまり、ガンマによってブレーキが踏まれるわけです。

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全体として、オプションの買いは「ガンマロング」と呼ばれ 利益が増え始めると加速度的に利益が増加します。反対に損失のほうは、ガンマの減少でブレーキがかかります。

 

逆に、オプションの売りは、利益が出始めてもガンマによってブレーキがかかり減速します。反対に損失のほうはガンマによって加速する形です。

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このように、オプションの買いには「ガンマロング」という特性があるため、儲かるときはガンガン儲かり、損するときはブレーキがかかるようになります。一方で、「ガンマショート」という表現は聞きません。利益戦略に結びつけるのが難しいからでしょうか。

ポジティブガンマとデルタヘッジ

このようなガンマの性質を生かすと、面白いポジションが作れます。デルタロングのポジションに、先物を組み合わせると、デルタをゼロにすることができるのです。

 

例えば、ATMのコールをロングすると、デルタは0.5です。これは0.5の現物を持っているのと同じ損益曲線になります。そこで、0.5の現物や先物をショートします。すると、デルタが0になり、値上がっても値下がっても損益が変化しないポジションになります。また、同じ行使価格のプットとコールを買っても相殺されてデルタが0になります*2。これはデルタヘッジやデルタニュートラルと呼ばれます。

 

しかし実際には、ガンマが存在するため、価格が変動するとデルタが生まれます。オプションの買いによるデルタロングのポジションでは、価格の変動でガンマがプラスになり、デルタが発生し、プレミアムが生まれ、利益になる流れです。

 

つまり、価格の上下の動きと損益が連動せず、どちらでも動けば利益になるというポジションが完成します。これをポジティブガンマと呼びます。

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*1:現価格と行使価格が同じものをATM(at the money)といい、現時点で行使できる価格がITM(in the money)、つまり、コールならば現価格よりも行使価格が低いこと、プットならば現価格よりも行使価格が高いことを指します。OTM(out of the money)は、現価格が動かなければ行使できない金額にあることを指します。

*2:これをロングストラドルといいます。