FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

個人年金保険の節税効果は1%以下 シミュレーションで見る

『生命保険は「入るほど損」?! 』という本を読んだので、自分が契約している保険について、改めて計算をしてみました。多くの保険を解約してしまいましたが、残っているのは個人年金保険です。

生命保険は「入るほど損」?!

生命保険は「入るほど損」?!

 

 個人年金保険のメリット 10%以上の利回り

個人年金保険とは、毎月一定額を積み立てると、65歳から毎年年金をもらえるという保険です。もらえる年金額の合計は、積み立てた額をギリギリですが上回ります。これだけ見るとたいしてお得でないように感じますが、考えたのは節税メリットです。

 

生命保険などの保険には、生命保険控除というものがあり、生命保険、介護医療保険、個人年金保険のそれぞれについて最大で所得税4万円、住民税で2.8万円が控除されます。所得税率20%とすれば8000円、住民税率は10%なので2800円、合計1万2800円税金が少なくなるわけです。

 

月約1万円を積み立てると、年間12万円の積み立てに対して、1万2800円の節税。単純に計算すると10%以上の利回りです。これはいい! と思ったのが当時、加入した理由でした。

積立金を自分で運用したら?

しかし当時意識にかけていたのは、積立金を自分で運用したらどうなるか? という発想です。欠けていたというよりもシミュレーションをしませんでした。そこで改めてシミュレーションです。

 

すでに積み立てを初めて数年経過しているので、これまでに積み立てた額と解約時の返戻金は確定しています。解約した時にもらえる返戻金は確定している、いわば現金としての現在価値(Net Present Value)ですね。

 

今後積み立てを継続して、何年か後に年金をもらった場合について、その現在価値を計算してみたらどうなるでしょうか。現在価値なので、何%で割り引くかによって価値が変わります*1

 

これによって、解約して返戻金をもらい自分で運用したほうがいいのか、継続して保険金を積み立て続けたほうがいいのかを比較します。

節税効果込みでの現在価値

まずは節税効果を織り込んだ現在価値です。年数の変化は返戻率の変化を組み込んでいます。青線が払込済み金額、赤線が現時点での返戻金額です。返戻率は現在79.2%となっています。

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けっこう面白いグラフになりました。まず割引率が2%以上だと、年を経るごとに現在価値がどんどん低下していきます。割引率4%では12年目で、3%では15年目で現在価値が0を割り込みました。これは、3%で運用できるのなら、今後の年金保険料の払込はマイナスの価値しかもたないということを意味しています。

 

割引率1%では現時点での返戻率とほぼ並ぶ数字になりました。つまり、この年金保険を継続していくことは年率1%で運用するのと同等ということになります。ただし、払込済み金額にはほぼ永遠に至らなそうです。

 

割引率をもっと下げて1%以下にすると年数を経るごとに現在価値が上昇し、払込済み金額をも上回りました。例えば、0.5%なら15年目で、0.3%なら12年目で払込額を上回ります。つまり、0.3%運用をしていると思えば、十分に意味のある保険だということです。

 

グラフには書きませんでしたが20年目でちょうど払込額に達する割引率は0.7%でした。実質的にこれから20年もの0.7%定期に入るのと同じですね*2

節税効果がなかったら?

ではこの節税効果がなかったらどうなるでしょうか? 払込済額と現時点での返戻金のほか、参考として節税効果込み割引率2%を記載しています。

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割引率1%の節税効果なしはひどい右肩下がりです。現在価値ゼロにはなりませんが、大きく価値が減っています。かろうじて現時点での払込済み額を超えるのは割引率0.3%のラインです。また割引率0.1%の場合は払込済み額にもぎりぎり達します。

 

つまり、0.1%運用した場合とこの年金保険はほぼ同価値ということですね。銀行の定期預金でも0.1%は金利が付くので、金利に対する税金を考慮しなければあまり変わらないということになります。節税効果を加味すると、0.7%程度の価値があったのでその差は大きいものがあります。

IRRで利回りを比較する

今度はIRRで利回りを計算してみました。これまでの計算と違うのは、現時点から先についての計算ではなく、加入当初からの支払い額をベースに、最終年で解約して返戻金をもらった場合の試算です。結果は次のようになりました。

  • 節税効果なしの場合 0.0000000001%
  • 節税効果加味の場合  0.76%

なるほど、節税効果を加味すると0.76%定期に入るのと同じ、節税効果がなければ限りなくリターンはゼロの定期口座という感じです。まとめると、個人年金保険の節税効果は1%以下、だいたい0.7%くらいという結論です。

節税効果は増減する

ひとつ注意点は、節税効果は人によって変化するということです。今回は、所得税の限界税率20%で計算しましたが、これは課税所得が年間330万円を超えている人の場合です。課税所得が900円を超えると税率が33%に上がるので節税効果は少し上がります(8000円→1万3200円に)。逆に、所得が下がると節税効果も減ります。

 

課税所得は家族構成などで大きく変わるので一概にいえませんが、こちらの表によると、課税所得が330万円を超えるには年収で800万円超という感じです。課税所得900万超えは年収でいうと1500万円くらい必要です。

年収⇒課税所得の換算表 : 社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方

 

年金生活に入れば当然課税所得は大きく減少します。つまり節税効果が減少するわけです。0.7%の定期預金だと思えば、まぁダメダメではないとは思いましたが、収入の変化によって途中解約や払済への移行も検討です。

クレジットカードポイント

最後に、最近の保険はクレジットカードで支払えるんですね。ぼくの場合は2%還元のクレカを使っているので、ポイント分が支払いから還元になります。支払い額が2%減少したとして計算すると、IRRは節税効果込で0.94%にアップしました。

 

【保険金を一定期間払うと、死ぬまで保険金が年金のように支払われ続けるという長寿保険についてシミュレーションしてみました】

kuzyo.hatenablog.com

 

*1:現在価値はxnpv関数を使いました

*2:ただし途中解約すると大きくマイナス