投資でセミリタイアする九条日記

ETF投資を中心に、太陽光投資や不動産投資、オプション、VIX、FX、CFDまで使ってセミリタイアを目指します

時価総額という不思議 『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』

cisという個人投資家を知っているだろうか? トレードで230億円もの資産を築いた個人トレーダーでTwitterを活用しており、「一人のチカラで日経平均を動かせる男」として有名です。その彼が著書を書いたのでさっそく読んでみました。

 

cis氏は基本的にデイトレーダーで、インベスターではありません。株を買っても、その株の本質的な価値が上がることで資産を築いたのではなく、値動きの差を取ることで利益を稼ぐスタイルです。

 

そのためぼくの資産運用スタイルとは異なるのですが、経済に対する見方にはたいへん参考になる部分がありました。例えば、時価総額の不思議です。

ある人がゼロから起業して会社をつくり、その会社の時価総額が 10 年後に現在のアップルくらいになったとする。ざっと100兆円。 その100兆円の価値はどこからきた

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

そうそう。この100兆円はいったいどこから来たのでしょう? 同じように、何かのショックで株価が大きく下落したとき、「一晩で1000億円が失われました」などとニュースになります。いったい、この失われた1000億円とは何なのでしょう?

 

新たに100兆円が生まれたときに、誰かの100兆円が減ったわけではありません。一晩で1000億円が失われたときも、ビルが無くなったとか誰かの預金が減ったとかそういうことではありません。ではこれはなんなのか。結局時価総額なんて、架空の数字で減ったり増えたりするけど、ゲームの中の数字のようなものなのでしょうか?

 

ちょっと前までそんなふうに思っていたことがありました。でも最近は、世界の富というものが、そこまで単純なものではないということに思い至りました。

富の価値とは将来に渡って生み出すキャッシュ

株価の算定プロセス、または企業の時価総額の算出プロセスを考えてみましょう。かかったコストを元にするコストアプローチ、同業他社の価格と比較するマーケットアプローチ、いろいろとありますが、最も本質的なのは、今後それが生み出すキャッシュを元にしたインカムアプローチではないかと思っています。

 

その企業が将来に渡って生み出すキャッシュ=インカムを、一定の利回りで割り引いて現在価値に起き直して足し合わせ、その合計が時価総額となる計算方法です。DCF法などとも呼びます。時価総額を株式数で割ったのが株価ですね。

 

この前提に立つと、100兆円があらたに生まれたというのは、将来稼ぐであろうキャッシュの合計が100兆円見込まれるということになります。1000億円減ったというのは、将来稼ぐはずだったキャッシュが1000億円減ったということを意味します。

 

つまり増えたり減ったりしたのは、現在の誰かのお金とか資産ではなく、将来のものだったのです。これが無から価値が生まれる正体であり、突然価値が減少する中身なのです。

世界の時価総額が増え続ける=未来の成長

こう考えると、世界の株式時価総額が増え続けるというのは、未来はもっと企業が生み出すキャッシュが増えるだろうという人々の期待に支えられていることが分かります。資本主義は成長する、未来はもっと良くなる。こう思うなら、時価総額は増え続けることになります。つまり、世界分散投資で全世界インデックスを買っていれば、増え続けるわけです。

 

一方で、世界の成長は止まるとみんなが思えば、時価総額は減少します。未来への成長期待がそれを決めているわけです。

 

それが本質、根本ですが、もっと気分的な要素も実はあります。PERがそうです。これは1株あたりの利益=EPSに対して株価が何倍になっているかを示します。経済の成長スピードが一定でも、みんなの気持ちが楽観的ならPERは上昇し、株価は上昇します。悲観的ならPERは小さくなって株価は下落します。

 

PERとは、別の見方をすれば利回りの逆数ですから、どのくらいの利回りを期待しているかということでもあります。PERが20倍ということは、20年の利益合計が株価となっている、つまり5%の利回り期待ということです。40倍なら2.5%と利回り期待が小さくなっていますし、10倍なら10%の利回り期待です。

 

たとえば国債の利回りが1%ならば、相対的に2.5%の利回り期待は高いので、PER40倍も正当化されるかもしれません。逆に国債が5%ならば、PERは20倍以下でないとリスクを取る意味がなくなります。

すべてに影響する国債利回り

この国債利回りは、PER以外にも影響を与えます。未来のキャッシュフローを割り引くときに割引率を使いますが、これは通常、リスクフリーレート(国債利回り)+リスクプレミアムを使います。リスクプレミアムは、事業の不確実性で決まるものなので、国債利回りが上がれば割引率も上昇し、将来キャッシュフローの価値が減ります。つまりその足し合わせである現在価値=株価も下落します。逆に、利回りが下がれば現在価値も上昇するわけです。

 

国債の利回りが非常に重要だと言われる理由です。

 

そして国債利回りは、こと10年もの以上の長期と呼ばれるものについては需要と供給で決まります。人々が5%の利回りでも借りたいと思うなら5%以上になっていきますし、5%じゃ借りないと思うなら下落します。

 

 

そして5%で借りたいかどうかは、その利回りで借りてもそれ以上の利益が出せるかどうかの景気状況にもよりますが、もう一つインフレでも変わります。インフレ率が5%ならば、3%でお金を借りるのはよい選択です。3%でお金を借りて土地でも金でも買えば、利息以上に価格が上昇するということなのですから。

利回りに無頓着になった日本

このように国債金利の影響は多方面に渡りますが、日本ではほとんど意識することがなくなってしまいました。長年に渡ってデフレが続き、ゼロ金利が定着してしまったからです。

 

では世界中でそうかというと、米国でも国債金利は3%ありますし、途上国では5%以上も普通です。それは同時にインフレも起こっているということです。

 

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金利が下がる→金利が下がるとPERは上昇するし割引率も下がる→時価総額も増える→株価も上がる。

 

上記のグラフをみると分かるように、全世界で金利は長期的に減少してきました。金利が下がれば時価総額が増えるという理屈です。

 インフレは株価を上昇させる

もう一つ、インフレがあります。インフレはモノの値段が上がることを指しますが、逆に言うと通貨の価値が下がることでもあります。企業が売るモノの値段が上がり、合わせて仕入れの値段や給料も上がるでしょうが、同時に利益も上がります。

 

ものすごくざっくり言って、5%のインフレなら企業利益も5%上がるはずです。つまり株価も5%上がります。インフレが続くことで、すべてのものがインフレ率と同じように上がると考えられます。

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日本では2000年あたりからずっとインフレ率がゼロにへばりついていますが、米国では3%前後を維持しています。毎年米国は3%株価が上がってしかるべきで、日本は変わらないという状況でもあります。

 

これはこの20年ほど、米国株に投資していたらもうかるわけです。

普通は為替が歪みを吸収する

ただし、こんなフリーランチが通用するわけではなく、本来はインフレによる差を為替が吸収します。インフレ分だけ為替が変動して、自国通貨建てではプラスマイナスゼロになるはずです。

 

日本でいうと、金利差の分だけ円高になって、インフレのドルで稼いだ分が円建てでは円高で相殺されるはずなのです。これが、長期的には円高になるといわれる理由です。

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ところがこの10年どころか20年間、ドル円チャートは100円前後で変わっていません。であれば、ドル建て投資は有利ですね。問題は、今後、理論通り円高に振れるのか、それともこのまま続くのかということです。

 

一般に言われているのは、円高になりきらないのは、日本が深刻な財政課題を抱えているからです。国債発行額が高止まりし、常にデフォルトの危機にさらされています。もしデフォルトしたら、円の信任は失われ、急激なインフレ、そして円安に動くでしょう。

 

そのリスクがあるから、円高に向かわず横ばいなのではないかということです。

だから経済は面白い

cis氏の本をきっかけに、時価総額ってなんなの? という疑問から、じぶんなりに経済情勢を見てきました。個別株で企業業績を分析するのも面白いものですが、インデックス投資というのも経済情勢に密接にリンクしているという意味で、たいへん面白いですね。

 

日本という不思議な歪みと爆弾を抱えた国に住んでいることのメリットをうまく生かしながら、投資手法を考えていきたいと思いました。