FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

バフェット vs. マスク モート(堀)かイノベーションか(2)

前回は、バフェット流の「モートを持っている企業」について書きました。今回はその対極、イノベーションで世界を変えようとしている企業です。

 

 

kuzyo.hatenablog.com

 

 

世界がよりよくなっていくのは、これまでなかったものが生み出され、それが新たな市場を作り出したことによるものです。スマホという市場を作り出したApple、検索型広告という市場を作り出したGoogle、SNS広告という市場を作り出したFacebook、いずれもイノベーションによって世界を推進してきました。

 

いまある市場で競合に勝つことも重要です。その切磋琢磨によって商品やサービスの価格は下がり、品質は向上します。でも、最も重要なことは、これまでなかった市場を作り出すことです。ドラッカーは次のように言っています。

 

企業の目的は顧客の創造である。
したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

 そして、イノベーションには失敗がつきものです。確実に成功するイノベーションというものはなく、イノベーションはリスクとともにあります。だからこそ、イノベーションを起こそうという気概を持った企業への投資は、リスクマネーの提供という意味で重要なのです。

 

例えていうなら、いかに深くて広いモート(堀)を作っても、その堀を渡らずに済むような目的地を作ってしまうのがイノベーションです。

 

先に書いたように、AppleもGoogleもFacebookも、その事業基盤を作ったのはイノベーションによるものでした。ところが、事業が巨大になるにつれて次第にイノベーションよりもモート(堀)の強化に注力するようになってきたように見えます。AppleはiPhone以降目立ったイノベーションがありません。Googleは、関連会社のXを中心に「ムーンショット」と呼ぶようなイノベーションを実現させようとしていますが、未だ目立った成果は出せていません。Facebookは、上場直後のInstagram、WhatsUpの買収などはさすがでしたが、最近はモートのほうに熱心なようです。

 

バフェットがApple株を買ったことが象徴するように、すでにイノベーション企業ではなく広くて深いモートで収益を上げる企業に変貌したのかもしれません。

 

では、イノベーションに向けて突き進んでいる企業はどこか? ぼくが注目しているのはイーロン・マスク率いるTeslaです。Teslaは、次のようなミッションを掲げています。

出来るだけ早く大衆市場に高性能な電気自動車を導入することで持続可能な輸送手段の台頭を加速する、というのもです。

テスラのミッション | テスラジャパン

現在Teslaは電気自動車のパイオニアであり、販売台数こそ中国の北京汽車のECシリーズがトップですが、その先進性を疑う人はいないでしょう。自動車産業の常識とは全く異なるIT企業的なスピード感で規模を拡大し、機能を追加してきていることもTeslaのイノベーティブな点です。

 

昨日も、駐車場に2週間で作ったテントの中にmodel 3の生産ラインを構築することで、生産目標をクリアしたという記事が出ていました。

 

wired.jp

 

そのあまりにIT的なやり方は、安全性が重視される自動車産業の中では異端児であり、ゆえに数多くの批判も受けています。しかし、自動車産業はこうあるべし、という考え方自体を変革するという事自体がイノベーションでもあります。

 

イーロン・マスク自身は、さらに大きなビジョンを持っています。

「太陽光発電とともに電気自動車を普及させることは、この地球を石油依存から脱却させ、気候変動に対処し、火星への移住を実現する時間を稼ぎ出すことになる」

『イーロン・マスクの野望』桁外れの野心家 未来を変える天才経営者() | 現代ビジネス | 講談社(2/3)

 彼はTeslaの経営とは別に、未上場のSpaceXというロケット製造・宇宙輸送の企業を経営しており、こちらが実現しようとしているイノベーションはさらにぶっ飛んでいます。既に、現役最大級のロケット「ファルコン・ヘヴィ」の打ち上げに成功しており、さらにBFRと呼ぶ惑星間輸送システムの開発に着手しています。

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tokyoexpress.info

目的は、人類の火星移住。イーロン・マスクは、人類を火星に移住させ、他惑星種となることを目指しています。そのタイムリミットは長くはないと考えており、時間を稼ぐために太陽光発電を推進し、電気自動車を普及させるというのです。

 

マスクの最初の考察は、なぜ火星を目指すのかだ。「歴史は2つの方向に分岐しようとしている」と彼は書いている。「1つ目は、人類がずっと地球に留まり、わたしたちの絶滅とともに終わりを迎えるというもの。いつかはわからないが、いずれそうなるとわたしは確信している」

「誰もがこれに同意すると期待している代替案は、人類が多惑星種となることだ」。これを実現するための最も現実的な方法が、火星に自給自足の移民地を建設することだとマスクは続ける。

イーロン・マスクの「火星移住計画」はどれくらい現実的か? 専門家が検証してみた|WIRED.jp

ここまで壮大なビジョンを掲げる男がほかにいるでしょうか。

 

TeslaもSpaceXも、成功確率がどのくらいあるのかというと微妙かもしれません。でも、それが成功したら世界は圧倒的に良くなるはずです。そしてそのために必要なのは資金です。商品やサービスが売れることはもちろんですが、予約のバックオーダーが貯まり生産能力がボトルネックとなっている現状、現金を燃やし続けているTeslaにとって、現在最も重要なのは金融市場からの信任を得ることでしょう。その裏付けとなるのが株価です。

 

このイノベーションの実現のために、わずかではありますが、資産の一部をTeslaに投資しています。少しでもイノベーションの役に立つように、そして成功した暁には投資家にも多くのリターンが返ってくることは間違いありません。

 

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株式公開から8年で、1800%の成長を果たしたTesla。普及車種のmodel 3の生産が軌道にのれば、ついにキャッシュフロー黒字化を果たすといいます。それはそれで楽しみなのですが、なんと先日、Tesla CEOのイーロン・マスクは、Teslaを非公開化するとTwitterで発言しました。TOB価格は420ドルだそうで、これは現在の価格よりも70ドル以上高く18%のプレミアムがついています。

 

Twitterでこうした重要情報を公開すること自体に株価操縦の疑いがあり、問題になっていますが、キャッシュフロー黒字化の目処がついた今、非公開化したいというのも本当なのでしょう。株主というのはリスクマネーの共有元であるだけでなく、経営にうるさく口を出すわけで、イノベーション自体を追いたいマスクにとってはなんとかしたかったということなのでしょう。

jp.reuters.com