米国の金融緩和局面が終わり、利上げが続いています。FFレートは1.75-2%のレンジに設定され、2018年は4回利上げ予定で、あと2回が予定されています。
米国10年債の利回りを見ると、2.85%に達しており、過去5年で見ても最高値に近づいています。一方で、経済は好調でS&P500はこのところ横ばいですが、ハイテクセクターは上昇が続いている状態です。
ただし、金融緩和で利下げが続き、各種アセットが拡大してきた時期はそろそろ終わるかもしれません。S&P500の上昇がどのくらいの長さ続いたかをグラフで表示した下記の記事でも、上昇率はまだ過去最高ではないが、上昇期間は過去最高に近づいてきていることが分かります。
金利上昇は長い目で見ると経済を冷やす効果があるので、そろそろ世界的株高が反転することも想定したポートフォリオに組み替えることを考えておきたいと思います。では、金利上昇局面ではどんな商品を持ったらいいのでしょうか?
金利と債券の関係:デュレーション
初歩的な話ですが、金利に最も大きく影響を受けるのは債券です。基本的には、
- 金利下落 → 債券価格上昇
- 金利上昇 → 債券価格下落
という構造です。過去に4%利回りで売られていた債券は、金利が2%になればお宝債券ですから、値段が上昇しても買う価値があります。逆に利回り2%利回りで売られていた債券は、金利が4%になったら価格を大きく下げないと価値がありません(新規発行債券を買ったほうが得)。
金利の変化が債券価格にどのくらい影響するかは、その債券の残存期間(利払いを受け取れる期間)がどのくらいあるかに依存します。利払い期間が長いほど、金利変動の影響を受けやすいわけです。
債券投資では、この値を「デュレーション」といいます。一般に、デュレーション=残存年数(償還までの残り年数)であり、5年とか8年などと表します。同時に、このデュレーションは、金利が1%変動したときの債券価格変動率も表します。デュレーションが7年ならば、金利が1%下落すると債券価格は7%上昇、逆に1%上昇すると7%下落します。
上記は、iシェアーズの債券ETFから、デュレーションと分配金実績を表にしたものです。長期の国債になるほどデュレーションは上昇し、つまり金利変動の影響を受けることになります。デュレーションは、株でいうボラティリティのようなものですね。
一方で、金利は長期になるほど上昇する傾向にあります。短期利回りと長期利回りをグラフにしたものをイールドカーブと呼び、基本的には右肩上がりとなります*1。
※investing.com より
債券価格のもう一つの要素、信用リスク
もう一つ、債券価格を決める要素が「信用リスク」です。これは、債券発行元が返済をできなくなるリスクのことです。先の米国債の場合、返済できなくなる=デフォルト の可能性は「なし」とみなすことになっており、信用リスクゼロといえます。
信用リスクが高いほど、米国債利回りに追加して利回りを上げる必要があります。つまり、デュレーションが短いのに高利回りというのはその分信用リスクをとっているわけです。
その観点で、米国債以外の債券ETFについて、利回りとデュレーションのグラフを作ってみました。
HYGのようなハイイールド債は、信用リスクを大きくとっているため高利回りです。このことは、ネガティブに見えますが、一方で、デュレーションリスクを相殺できるというメリットもあります。これは、金利が上昇するとデュレーションにより債券価格は下落しますが、金利が上昇するということは経済が好調ということで、それはハイイールド債の発行元の信用リスクが減るということも意味するからです。
デュレーションがマイナスのETFもある
ではこれらを踏まえて金利上昇局面ではどのような商品に投資するのがいいのでしょうか? 最も教科書的な話でいうと、デュレーションが小さく信用リスクがまったくない短期米国債ETFとなります。
デュレーションが0.38年しかないSHVなどですね。ただしこちらは利回りも1.03%しかありません。こちらの商品は、金利の変動の影響をほとんど受けず、米国発行ということで信用リスクもありません。安全資産の最たるものになります。
金利上昇局面は当然経済が好調ということですから、株式に投資するのも一つの正解です。ただし、どこかで調整が入ることでしょう。
そんなかで、面白い債券ETFを見つけました。ウィズダムツリー 米国ハイイールド社債ファンド(金利ベア型)(HYND)です。こちらは、米Sprintなど世界各国のハイイールド債に投資しながら、米国債をショート(結果、米国の組入比率は-14.48%)するという組み合わせの債券ETFになります。
ハイイールド債で分配金利回り4.85%を実現しながら、米国債をショートすることでデュレーションは-6.94年となっています。つまり、金利が1%上昇すると価格が7%上昇するという、まさに「金利ベア型」です。
ほぼデュレーションが7年のIEF(赤線)と比較するとHYND(青線)の特徴が分かります。こちらは配当を除いたグラフですが、金利変動に伴い、逆相関の値動きになっています。
金利上昇局面で何を買うか?
ここまで調べてきて、正直悩んでいます。SHVは確かに安全資産ですが、米ドル建てMMFでも年利では1.4〜1.5%の利回りが出る状態です。つまり、SHVはほぼ現金で持っているのと変わりません。
ではもう少しデュレーションの長いIEFはどうかというと、上記のグラフを見ても分かるように、金利変動で10%近い変動が生まれています。そしてハイイールド債は、現在買われすぎの状態です。
一方で、米国債をショートするHYNDまで行くかというと、悩ましいところです。もうしばらく状況を見たいと思います。
*1:現在、イールドカーブが右肩上がりにならずフラット化する現象が話題になっていますが、それはまた別の機会に