FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

VIX投資再び コンタンゴが戻ってきた

数多くのデリバティブがあるなかでも、VIXは王様なんじゃないかと思っています。何しろ、構造的に儲かる仕組みになっていて、しかも儲かり方が年率で50%以上です。複雑な部分もありますが、資産の数パーセントをあてる価値は十分にある投資だと思っています。

 

 

まずは、下記のグラフを見てください。これはVIXを使った投資先であるVXX(青線)の5年間の推移です。比較対象としてS&P500(赤線)も乗せています。

f:id:kuzyo:20180418145845p:plain

 5年間で実に97.1%も下がっています。これは5年前に1万円を投資すると現在281円になっていることを意味します。逆にいうと、5年前にVXXを1万円売れば、35.5倍になっているということです(税金、手数料、金利を除く)。

 

ふつうVIX投資といった場合、このVXXのショート(売り)を中心として考えるものになります*1

 

VIXとは? 

VIXとはいったいなんでしょうか? これはvolatility indexの略で、米S&P500指数のボラティリティ(価格変動)に連動した指数になります。別名「恐怖指数」と呼ばれますが、それはS&P500が暴落するときはたいていボラティリティが高まり、VIXも上昇するからです。

 

もう少し丁寧な説明を、以前の記事「デリバティブの本質と魅力 株からVIXへ」から引用します。

S&P500のオプションのプレミアムに連動して作られた指数がVIXです。つまり、S&Pが上がろうが下がろうが、その値動きが激しければVIXは上昇し、値動きが小さければVIXは下降します。S&P500に対して、そのデリバティブ商品がVIXといえますね。

話はさらに続きます。VIX自体は商品として取引ができず、実際に売買されるのはVIXのさらにデリバティブ「VXX」になります。現在のVIX価格があると同時に、将来のVIX価格というものもあります。いわゆる先物です。将来S&P500のボラティリティが上昇すると見込まれればVIXの先物も上昇するという構図です。先物ですので、「いつのタイミングの先物か」という要素があり、普通の状態だと近い未来の先物は安く、遠い将来の先物は高くなります。

つまり、近い未来(=期近)のVIXは安く、遠い将来(=期先)のVIXは高いという状況です。VXXは、期近のVIXと期先のVIXのセットになっていて、時間が経っていくと期近のVIX(安い)を売って、期先のVIX(高い)を買うという処理が行われています。これによって、常に一定の先のVIX価格に連動するように設計されているわけです。

ところが、この安いVIXを売って、高いVIXを買うという処理は、必然的に価格の下落をもたらします。そのため、VXXは時間が経つに従って価格が下がる(減価する)という特徴を持つことになります。

kuzyo.hatenablog.com

 

VXXとは?

VIXは直接取り引きすることができず、VIX指数に連動した商品を取引します。VIX指数の先物は国内でもGMOクリック証券がCFDとして取引できますが、ここではVXXの取引を見ます。

 

VXXとは、米BARCLAYS iPathが提供するもので、VIXの先物を組み合わせたETN*2になります。

 

このVXXは、VIXの先物を組み合わせて、常に一定の期限をもったVIXの詰め合わせになるように構成されています。iPathのページから、現在(2018/04/18)の組み合わせを見てみましょう。

f:id:kuzyo:20180418154630p:plain

5月18日満期のVIX先物が94.8%、4月18日満期のVIX先物が5.1%の構成となっています。本日夜、米国市場でAPR 18が満期を迎えると思いますので、するとJUN 18が代わりに組み入れられるでしょう。

 

このように、期限が短い先物と長い先物の組み合わせになっていて、満期が近づくと短い先物を売って、長い先物を売るという処理が行われます。これによって、平均的な先物の期間を一定に調整しているわけでです。

 

ここではVXXの仕組みを見ましたが、VIX先物を使えば自分でもVXX的なポジションを取ることができます。例えば直近の期限の先物(期近)を売って、期限が長い先物(期先)を売る形です。これをカレンダースプレッドといいます。ただし1単位から売買できるVXXでは、エクスポージャーが40ドル少々(2018/04/18)、必要な証拠金は6500円(サクソバンク証券)ですみますが、自分でカレンダースプレッドを組む場合は、最低取引単位がVIX価格の10倍(400ドル)、レバレッジは5倍(証拠金80ドル)の2倍が必要になるでしょう。

コンタンゴとバックワーデーション

期限が短い先物(期近)を売って、期限が長い先物(期先)を買うという処理が、VXXに面白い特徴をもたらします。というのは、通常、期近は価格が安くて、期先は高いからです。安いものを売って、高いものを買う。これを日々繰り返すわけですから、ほおっておいても価格は下がります。これがVXXがずっと価格が下がり続ける理由なのです。

f:id:kuzyo:20180418155729p:plainVixCentralより

 

VIX先物の価格のグラフがこちらです。一番下の緑の点線が現在のVIX価格です。Mayは16.48ドルなのに対して、Junは16.95ドルと値段が上がっています。このように、未来にいくほど価格が高く、しかも価格差が大きいのがVIX先物の特徴です。

 

未来になるほど価格が高くなるという右肩上がりのグラフ構造のことを「コンタンゴ」といいます。もとは商品先物取引の用語です。このコンタンゴ状態にあるかぎり、VXXはどんどん値段を下げていきます。つまりショートしておけば、利益が積もっていくわけです。

 

ただし、VIX先物は常にコンタンゴなわけではありません。次のグラフを見てください。こちらは2018年2月ころの価格です。

f:id:kuzyo:20180418160554j:plain

VIX価格が17.31ドルなのに対して、Febの先物は15.625ドル、さらにMarは14.965ドルと未来の価格が下がっています。このとき期近を売って期先を買う処理は価格の上昇をもたらします。つまりVXXが上昇してしまうのです。このような状態をバックワーデーションといいます。

 

VXXをショートする場合、コンタンゴの場合は利益が出て、バックワーデーションの場合は損失となる。そのような構造になっています。では、コンタンゴはどのくらいの頻度で現れるのでしょう?

f:id:kuzyo:20180418161147p:plain

同じくVIX Centralから、F1-F2で何パーセントのコンタンゴ実績があったかのグラフです。このように、ほとんどの期間でコンタンゴであり、まれにバックワーデーションが現れます。そのため、VXXは安定して価格が下落(減価)していくわけです。

 

VIX投資のリスク

VXXショートの利益の源泉は、VIX先物の期近が安く期先が高いという構造にあることを説明してきました。そして、損失が生じるのは期近のほうが高くなるバックワーデーションに陥ったときになります。そのほかにVIX投資のリスクはないのでしょうか?

 

期近にしても期先にしてもVIX価格の変動は直接影響を及ぼします。つまり、短い期間でみれば、VIXが上昇するとVXXも上昇するという構造にあります。

f:id:kuzyo:20180418163508p:plain

今度はVXX(青線)とVIX(緑線)の推移を見てみましょう。このように、VIXとVXXは概ね連動して動きます。VIXが上昇すると先物も上昇しますので、当たり前といえば当たり前ですが。

 

価格が跳ね上がっているのは、2018年2月の米国市場調整のタイミングです。このとき、S&P500自体は2月2日と5日の2日間で▲6.1%の下落を見せました。株式市場はたかが6%の調整でしたが、このときVIXは一気に+200%近い上昇を見せました。VXXも+100%上昇しています。VIX投資家にとってはリーマンショック並の大暴落だったわけです。

 

このときVXXをショートしていたら、価格が2倍、つまり資産は半分になっています。証拠金取引をしていた場合、レバレッジ2倍以上なら強制ロスカットとなる状態です。これがVIX投資の最大のリスクになります。

 

しかし、一時的に上昇しても、いずれは下落するというのがVIXの特徴でもあります。過去10年のVIX指数の推移を見てみましょう。

f:id:kuzyo:20180418165413p:plain

 

2008年のリーマンショック、2011年の米国債ショックの際には40を超える高い水準まで上がったVIXですが、概ね15〜20くらいの間で推移しているのが分かります。これはVIXの基となっているのがS&P500のコールおよびプットのオプション価格で、S&P500の30日間のインプライドボラティリティに連動してVIXが決まるとされています。

 

つまりS&P500のボラティリティが構造的に変化しない限り、VIXは上がったり下がったりはするものの上昇トレンドや下降トレンドはもたないと考えられるわけです。

 

VIX投資時のリスクは、一気に2倍近くまで跳ね上がる場合があるため、そのときでもロスカットされないレバレッジで取り組むことが最大のリスク管理になります。また、数週間単位ではバックワーデーションも継続する場合が多いので、VIXが暴騰してバックワーデーション状態になったらVXXショートをクローズするなどの対応も重要です。

 

ぼくはVIX関連に資産の最大で3%を充てます。サクソバンク証券ではレバレッジ5倍なので、エクスポージャー(リスクにさらされる金額)を最大3%とします。つまり、証拠金にあてられるのは0.6%ですね。

 

それでは次回から、実際にVXXのショートをやってみましょう。

追記

サクソバンク証券にログインしてみたところ、現在VXXは次のような状況でした。

  • 買い(ロング)のみで売り(ショート)は不能
  • 通常はレバレッジ5倍だが、現在は1倍(レバレッジなし)

これは2月のVIX暴騰にともない市場のリスクが高まっているための措置だそうです。適宜、制限やレバレッジは見直していくということですが、タイミングについては決まっていないそうです。

 

というわけで、残念ながら、VXXショートの実践はもう少し先になりそうです。状況が整いましたら、また記載します。

 

*1:VIXを使ったヘッジという場合は、短期にVXXを売り買いすることを指します。

*2:ETNとは、「Exchange Traded Note」の略で、「上場投資証券」または「指標連動証券」と呼ばれる上場商品であり、ETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)と同様に、価格が株価指数や商品価格等の「特定の指標」に連動する商品。