FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

現金保有とは流動性への投資であり将来価値へ賭けるデリバティブ

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投資のことをいろいろと考えていると、いったい何を求めて投資をしているんだろう? と思うときがあります。お金でしょうか? 以前書いたように、お金とは現在の価値を将来の可能性と交換するデリバティブだと考えられます。 

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 現在物やサービスを買う代わりに、将来買う権利を買っているのが現金です。そしてこの現金は普通増えることはありません。それどころか、インフレになればその利率で減少します。インフレ率2%というのは、現金の価値が毎年2%ずつ減っていくのと同じだえといえます。

 

さらに税金があります。消費税8%が10%に上がったら、将来買えるものがさらに減ります。消費税は現金にかかる税金と言ってもいいでしょう。

 

こうしたデメリットがあるにもかかわらず、現金を保有するのは、大きく2つの理由があると思います。

 

1つは流動性です。資産はあるけど支払いは現金でしなくてはならない、そんな状況では現金が最高の価値をもちます。逆の観点でみれば、株や土地などが暴落しているときというのは、株や土地の価値が下がったというよりも現金の価値が冒頭しているとも言えます。

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 現金の価値の硬直性

2つめは価値の保存です。モノは時間が経つにつれて機能が劣化し価値が低下していきます。株式は必ずしも価値が低下するとは限りませんが、どの会社にも寿命があり、超長期でいうとほとんどの会社の株式は紙くずになります。土地(の権利)は価値が低下しにくいと考えられますが、土地自体が家を建てたり野菜を育てたり実際に利用できるものなので、利用価値の低下は価値の減少をもたらします。

 

金や仮想通貨は、現金に近い意味で価値が保存できるものでしょう。実需があまりなく(金の工業用実需は300〜400トン/年であり、年間生産4000トンの10%程度です)、皆が受け取ってくれると思うから価値がある、という循環的な幻想で価値が維持されているからです*1

 

 

ただし現金の価値には強い硬直性があります。給料や年金などは現金ベースの契約で支払われており、上がることは原資があれば容易ですが、下がることには(原資がなくても)強い抵抗があります。モノの価格も商習慣上、そうそう変動しません。下がることには抵抗がありませんが、上がることには強い抵抗があります。モノの値段が下がるというのは現金の価値が上がることを意味します。

 

さらに事務処理上の問題である定価や標準価格もあります。世の中のいろいろなものが時価であれば現金の価値は変動しやすいでしょうが、たいていのサービスや商品はほぼ一定の価格で売られています。これが現金の価値を一定に保っていると考えられます。

未来へのデリバティブ

こんな見方もできるかもしれません。現金を保有するのは、価値を現在のモノに使うのではなく、将来のモノを買う権利に変えています。これは、先物の概念そのものです。デフレの場合は先物買いのベッドは勝ち、インフレの場合は負けですね。

 

日本の場合、デフレが長く続いたせいもあって、現金保有というデフレへの賭けが成功してきました。一方で、インフレが激しい途上国などでは、現金を持つこと自体が先物買いと同じようなデリバティブ投資になってきます。この観点は、特に外貨を持つときには意識しておきたいものですね。

 

 

 

*1:この「みんなが受け取ってくれるから価値がある」という自己実現的な貨幣の捉え方は、経済学者の岩井克人が述べていることです。